あ、そう ★★★★ 75点(100点満点)
あまり期待していなかった映画が面白いと喜びが倍増する典型の映画。最初に断っておくとエンターテインメント性は皆無なので、そこのところよろしく。イッセー尾形好きか終戦前後の歴史が好きな人のみのニッチな映画ではある。それが「太陽」。
そもそも皇室は、僕ら一般人が判らない領域で、しかも情報があったとしても左右どちらかのバイアスが必ずかかる分野なので、この映画のそのあたりの史実を検証するのは不可能。いくつかの点でおかしいなと感じる部分がないわけでもないが、そのあたりは歴史家に任せるとして映画の内容を。
▽▼ネタバレあり▽▼
ポツダム宣言受諾後からマッカーサーとの会見を得て人間宣言するまでを昭和天皇の視点から一人間としての天皇を描いている作品。天皇としての孤独を描き非常に生々しい姿を映し出している。ほとんどのシーンは天皇中心(というより周りに人はいてもセットと同様な存在)で描かれており、周りの者はほとんどが侍従などで、会話があってもいわゆるコミュニケーションのレベルではなく、天皇が言葉を発していても一人芝居に近く、昭和天皇役のイッセー尾形がまさに適役。昭和天皇の口癖の「あ、そう」や細かな特徴を良く捉えており好演している。おそらく彼がいなかったら、ここまで完成度の高い作品にならなかっただろう。最初にこのニュースを聞いたとき、どうしてイッセー尾形なんだ?と疑問を持ったが、まさに適役で、顔まで似て見えてきたから不思議だ。
この作品はアレクサンドル・ソクーロフ監督によるスターリン・ヒットラーに続く三部作だそうで、昭和天皇という人物のみを描写に専念している。ストーリー的なモノはほとんど存在せず、ただただ昭和天皇の人と成を描くことに注力している。それが成功しているかどうかは人によって評価が分かれるだろう。先に書いたように、昭和天皇を知っているわけではないので、たまにテレビで観た昭和天皇の立ち居振る舞いからそれを評価するしかない。僕にはそれが非常に良く捉えられているとの印象を持った。
唯一その人物像以外に描かれているのが周りの人物との関係。侍従・御前会議のメンバーなどとの天皇という地位を通した関係をものの見事に描いている。大日本国天皇の統治者である天皇という地位にありながら、その意志とは関係がないところで、すべてのことが動いている現実をうまく表現していた。天皇個人として気が休まる瞬間が研究の時であること、また仲がよいことで知られた香淳皇后とのシーンはこの映画の中でのオアシス的なシーンであるだろう。
なかなかこのような映画は作られないため(つくったとしても思想的背景が多分に入っていて観られたものか・・・・)、非常に貴重な作品。先に述べたがエンターテインメント性は皆無なので、観る人を選ぶ。
イッセー尾形の昭和天皇は実際に観るとものすごく似ている。





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