硫黄島からの手紙

硫黄島の悲壮感が伝わってくる名作 ★★★★★ 92点(100点満点)

 今回は「父親たちの星条旗」に続く、クリント・イーストウッドによる硫黄島シリーズ第二弾「硫黄島からの手紙」。「父親たちの星条旗」とは、基本的につながりがないので、単独でも問題なし。やはり題材が硬派なだけに観る人を選ぶかも。少なくとも二宮目当てのジャニタレファン向けでないことは確か。ファンはどのような評価を下すか少しだけ気になる。

 前作とはかわり、日本軍側からの視点。物語は、渡辺謙が演じる栗林中将と、嵐の西宮が演じる西郷の二つの視点から交互に進んでいく。絶望的な状況下で、最大の成果を出そうと孤軍奮闘する栗林中将と、パン屋から徴兵され何とか生き延びようとする西郷。対照的な存在であるというところが深みを与えてくれる。


▽▼ネタバレあり▽▼


 この映画がすごいところは、イーストウッドが監督でありながら、日本人将兵の心の機微まで描ききれているところにある。戦場の極限状態の下で、様々な登場人物の思惑が入り乱れ統制を失いつつある状況において、ある者は自ら死を選び、ある者は少しで生きようと努力する。誰一人信用できない中で、自決する者、白兵戦に挑む者、逃げようとする者、特攻を仕掛ける者、それぞれの人間ドラマを各人物ごとに描ききっているのはさすがイーストウッド監督だなと敬服。細かいところの考証で疑問を感じるところはいくつかあったが、それを圧倒する力はすごいの一言に尽きる。

 「父親たちの星条旗」との違いは、「父親たちの星条旗」がアメリカ側の視点から描き、戦争の英雄とは何かを追求しているのに対して、「硫黄島からの手紙」では、兵士は何のために戦い、そして死んでいったかを突き詰めているところ。「硫黄島からの手紙」は硫黄島での厳しい状況を描いている。栗林中将のセリフの「一日でも多く足止めできれば、本土に住む自分の家族達を守ることができる。」がすべてを物語り、状況的には光が全く見えない中、全体的に陰鬱にの下で物語が進行されていくものの、それぞれの登場人物への感情移入を容易にし、それぞれ違う行動をしながらも各登場人物の行動の選択に対して、同意ができるようになっている。特にラストシーンで、米軍への最後の特攻を仕掛ける時に張りつめるスクリーンから出てくる緊張感は尋常ではない。あのときの何とも言えない感じは今まで味わったことがなかった。緊張感だけでなく悲壮感、死を目前にしたときの殺気と絶望が混じったような感覚は、監督の演出と俳優達の演技力のたまものではないだろうか。
 
 さんざん語り尽くされたけど,これを日本人監督がとれなかったのは残念。

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